こんな話を聞いた。
ぼんやりテレビをつけた部屋の中に一人いると視線を感じる。
自分以外誰もいないのに、見られていると思われてならない。
あたりを確認しても異常はないから、自分の杞憂だと考えるしかない。
でも、感じる。
確かに感じるのだ。
視線を。
見られているのを。
何度気のせいだとごまかしても。
何もない、誰もいないと言い聞かせても。
ぎりぎりと全身を毛穴から締め付ける圧迫感。
動けない。
もう動けない。
番組の音が響く。
お笑いタレントとスタジオの明るい笑い声。
音声が遠い。
画面を見ているのに意味が伝わってこない。
頭に入ってこない。
感じる。
でもどこなのかわからない。
自分の死角からなのか……。
無意識に総毛立つ。
ふと気付く。
凝視。
そうだ。
これは凝視なのだ。
じっと見つめられている。
どこから。
どこから?
恐い。
誤魔化したい。
眼を逸らしたい。
逃げ出したい。
今すぐに。
祈る。
救いを求めてテレビに集中する。
……画面の中のお笑いタレントが、じっと、こちらを見つめていた。
※途中から嘘です。
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