「なんで東大卒なのにダンスのプロなんかになっちゃったの? 〜邂逅編〜」vol.2

 「ダンスのパートナーを探すのは結婚相手を見つけるより難しい」。
パートナーシップについて古より伝えられし名言である。
この言葉とその意味するところの内容を、僕はこれでもかとテイスティングさせられていた。
 
 大学院卒業と前後してJCFでプロデビューしたとき、僕にはパートナーがいた。
そもそも一人ではデビュー戦に出場できないのだから当たり前と言えば当たり前だ。
組んだきっかけは今のオーナーである正三先生の紹介だった。
相手は当時すでにファイナリストで、ペーペーもいいところの僕とは全く釣り合っていなかった。
まあこれから伸びるだろう、ぐらいの気持ちで組んでくれたのかもしれない。
残念ながら僕が予想をはるかに上回る伸びないっぷりであったため、デビュー戦からちょうど1年後の試合終了と同時に解消を告げられた。
僕は相手にプロのしきたりなど色々なことを教えてもらいっぱなしであったため、ほとほと愛想が尽きたのかもしれない。
とにかく僕は夢に燃えるプロであるにもかかわらず踊る相手がいない状態になった。
2011年2月14日のことだった。
 
 ここから地獄のお見合い生活が始まった。
お見合いってもう結婚かよ!という声が聞こえてきそうだが、社交ダンスにおいて初めて会う同士がまずは踊ってみることを「お見合い」というのである。
ここで簡単に業界の事情を説明しておくと、社交ダンスのプロは構造的に男性が多く女性が少ない。
理由は簡単で、女性は食えないからである。
社交ダンスのプロはダンスを教えることお客様と踊ることで生計を立てている。
ダンスを習いに来る人で男性がいないわけではないが、基本的に女性が多い。
同性に習いたがる女性は多くはないので、勢い女性の先生は少数の例外を除いて経済的に厳しい状態に置かれることがほとんどというわけだ。
こういう事情がみんな薄々分かっているということもあり、プロ志望の女性は男性に比べ限られている。
しかし競技選手として活動するためにはカップルであることが絶対条件となる。
学連やアマチュアからターンプロするときに組んでいる相手や多大の同期とそのまま踊れるのはかなり恵まれたケースで、そうでない場合はひたすらパートナー探しに血道をあげるしかない。
 
 しかしプロ志望女性の数が男性に比べ少ない以上、話はそう上手く運ばないのであった……。

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